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文学散歩〜浅草橋・柳橋と時代小説〜
このコーナーは台東区立中央図書館発行の「江戸古地図でみる池波正太郎の世界 鬼平・剣客・梅安の舞台」を参考にし、本文は新潮社の剣客商売シリーズや文芸春秋社の鬼平犯科帳シリーズから引用した。
又山本周五郎の「柳橋物語」の本文は新潮文庫「柳橋物語 むかしも今も」から引用した。
但し、(1)〜(8)はHP作成者が付したもので、地図上の場所1〜8に当たる。
現代地図 江戸切絵図(株式会社 人文社より
浅草橋や柳橋界隈が時代小説に出てくるものは枚挙にいとまないが、その筆頭は山本周五郎の「柳橋物語」である。なぜならこの小説の舞台が正に柳橋・浅草橋・蔵前周辺だからである。
時代は元禄。主人公のおせんは茅町に祖父と一緒に暮らしている。故有って上方へ大工修行に行く庄さんとは、「待っててくれるかい?」「ええ、待ってるわ」とその帰りを待つ仲。だが、その間、おせんの身の上には地震・大火事・水害・飢饉・記憶喪失と様様な災難がふりかかる。火事の際、おせんに好意を寄せる幸太は必死でおせんを助け自身は水死する。この時、おせんは傍で泣き叫ぶ赤ん坊を不憫に思って拾い、貧しい中で育てていく。世間も江戸に戻った庄吉も、幸太との間の子と誤解し非難する。最後、誤解はとけ、謝る庄吉に対し精神的に強くなったおせんはしかし毅然として言うのである =幸太との間の子である=と。余りに悲しい物語ではあるが江戸庶民の生活が生き生きと描かれ、胸をうつ小説である。
では、文中に出てくる町のくだりをいくつか拾ってみよう。
《庄吉が上方へたつ前日、おせんと逢う場面
「これから柳河岸へいって待ってるよ、大事なはなしがあるんだ、おせんちゃん。来て呉れるかい」 「ええいくわ」 「大川端のほうだからね、きっとだよ」 〜〜 中通りをまっすぐにつき当たると第六天の社(1)である、柳原へはそこを右へ曲がるのだが、おせんは左へ折れ、平右衛門町をぬけて大川端へ出た。
《おせんの恋人庄吉と、おせんを好いている幸太は共に 〜〜 茅町ニ町目(2)の中通りに杉田屋巳基地之吉という棟梁が住んでいる。 〜〜 その弟子である。
《大火事で浅草御門が閉じられ、群集が逃げ場を失う場面
 浅草橋(3)まであとひと跨ぎというところまで来た。湯島のほうから延びて来る火は、もう佐久間町あたりの大名屋敷を焼きはらったとみえ 〜〜 このとき人の動きが止まって、前のほうから逆に、押し戻して来るのに気がついた。 〜〜 「御門が閉まった」 〜〜
「御門は、閉まった、みんな戻れ、浅草橋は渡れないぞ」 〜〜  浅草橋御門を閉められたとすれば、かれらが火からのがれる途はない、〜〜
《おせんの友人おもんは
〜〜福井町(4)のお針の師匠でいっしょになり、ただ一人仲良しとしてつきあっていた。家は天王町で丸半というかなりな油屋だった 〜〜

といったように浅草橋界隈の町が随所にでてくる。古地図を持ってそこらを歩いてみるのもおもしろい。

ご存知池波正太郎の鬼平シリーズ「浅草・鳥越橋」にはこんなくだりがある。
〜〜前方の左手に、宏大な御米蔵の大家根がのぞまれた。 その御米蔵の南端に、小さな橋が二つならんで架けられている。 これを鳥越橋(5)とよぶ。 大川(隅田川)の水を入り堀にしてひき入れた、その堀川へ架かっているわけだ。 あわただしく家路を急ぐ人びとを、かきわけるようにして傘山の瀬兵衛が、左の鳥越橋へかかったとき、ちょうど風穴の仁助が、右の鳥越橋をわたって来た。 (あっ。仁助 ) と、それに気づいた瀬兵衛が、おもわず網代笠をあげて顔を見せ、橋の欄干ごしに、 「おい、おい」 仁助へ、声を投げた。〜〜
文中の堀川とは三味線堀と隅田川間を流れていた川で鳥越川ともいい、天下の御蔵前通り(今の江戸通り)を横切って流れていたので通りには二本の橋が並んで架かっていたのである。丁度今の須賀橋交番前に当たる。

同じく池波正太郎の剣客シリーズ「あ日の小平衛」には、
〜〜小平衛は叔母が大好物の、浅草蔵前天王町の菓子舗〔甘林軒〕の〔茶巾餅〕をみやげに、〜〜 とあり
天王町(6)は今の浅草橋差橋3丁目1で、須賀神社の少し蔵前寄り辺である。
同、剣客シリーズ「決闘高田馬場」には、
 〜〜浅草の平右衛門町にある船宿(7)〔吉野家〕へまわり、ニ刻(四時間)ほど、うつらうつらと仮眠をとることにしている。 吉野家は、以前、恩師の秋山小兵衛がひいきにしていた船宿で 〜〜 とあり、
今の柳橋1丁目、神田川河口辺である。隅田川は江戸の大動脈であったからここには多くの船が発着し、船宿が軒を連ねていた。
同、剣客シリーズ「毒婦」には、
〜〜浅草御門外の大通りを浅草寺の方へ少し行くと、両側が浅草・茅町ニ町目の町すじになる。 その西側の、瓦町(8)との境の角地に〔浦島蕎麦〕という小きれいな店があり、ここの太打ちの蕎麦はなかなかにうまいという評判だ。 〜〜 とある。
この場所は今の浅草橋1丁目9辺、JR浅草橋東口辺に当たる。

このようにこの他の時代小説にも浅草橋界隈は度々登場するから是非お読みいただきたい。 

* 山本周五郎 (1903〜1967)山梨県生まれ。代表作「日本婦道記」「樅の木は残った」「赤ひげ診療潭」「青べか物語」他多数。
* 池波正太郎 (1923〜1990)東京浅草生まれ。代表作「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の三大シリーズをはじめ、膨大な作品群を残す。

台東区生涯学習センター内にある台東区中央図書館(西浅草3-25-16)の1階には"池波正太郎"コーナーが、2階には"台東区ゆかりの文学"コーナーがあります。是非この折に訪れてみてください。
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